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アラビア語は本当に難しいのか ─ 日本語話者にとっての壁と、意外な有利さ

· 約8分
Darasa.jp管理人
Darasa.jp管理人

アラビア語をやっていると言うと、だいたい「難しそう」と言われます。

僕も始める前はそう思っていました。文字は読めないし、右から書くし、そもそも音のイメージすら湧かない。

2年以上取り組んでみて思うのは、難しい部分と、そうでもない部分がはっきり分かれているということです。

そして「難しい」と言われるときの根拠の多くは、日本語話者には当てはまりません。

「世界一難しい」の根拠を分解する

よく引き合いに出されるのが、アメリカ国務省の外交官養成機関が作った言語難易度の区分です。

FSI language difficulty はこちら

英語話者が習得するのにかかる時間で、言語をいくつかのカテゴリーに分けたもので、アラビア語は最も難しいグループに入っています。目安はおよそ2,200時間。

ただし、ここで見落とされがちなことがあります。

同じグループに日本語も入っています。

つまりこの区分は「英語話者にとって遠い言語かどうか」を測ったものであって、言語そのものの難しさの順位ではありません。日本語話者が使うには、そのまま持ってこられない物差しです。

本当に難しい3つ

正直に今までの体感で書きます。ここは実際に日本語ネイティブにとって難しく労力が要るところです。

1. 文字

読めない文字を覚えるところから始まります。しかも右から左で、位置によって形が変わり、母音は書かれない。

ただしここは2週間で越えられます。 期間が短いわりに、心理的な壁がいちばん高い場所かなと思います。

2. 語根と派生

アラビア語の単語は、3つの子音の骨格(語根)から作られます。

同じ語根から10も20も単語が派生するので、辞書を引くときも語根で引きます。この感覚に慣れるまでは、単語の見当がつきません。

ただしこれは、慣れると逆に武器になります。知らない単語の意味が推測できるようになるからです。

3. 動詞の活用

これが最大の山です。

人称・性・数で形が変わり、完了形と未完了形があり、さらに派生形が10種類ほどあります。表にすると1つの動詞で数十の形が並びます。

僕もここで長ーいなが〜〜〜い停滞期を経験しました。

実は難しくない3つ

あまり言われませんが、楽な部分もあります。

1. 母音が3つしかない

a i u だけです。英語の曖昧な母音のような、聞き分けに苦労するものがありません。日本語の5母音より少ない。

2. 時制が2つしかない

過去形と現在形、ではなく、完了形と未完了形の2つです。

英語のような12時制も、進行形と完了形の組み合わせもありません。時間の細かい区別は、副詞や文脈で表します。

3. 疑問文が簡単

語順を入れ替える必要がありません。平叙文の頭に هَلْ を置くだけで疑問文になります。

英語のdo/doesや倒置に苦労した人ほど、ここは拍子抜けするんじゃないかと思います。疑問文の課で扱っています。

日本語話者が有利になる点

ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。

格変化は、助詞そのもの

アラビア語では、単語の最後の母音が文法的な役割を示します。

  • اَلْوَلَدُ -u = 少年
  • اَلْوَلَدَ -a = 少年
  • اَلْوَلَدِ -i = 少年

英語にはこれに当たるものがないので、英語話者向けの教材ではこの説明に何ページも使われます。

日本語には助詞があります。「語尾が助詞の代わりをしている」で終わる話です。格変化の課を読んでもらえば分かりますが、説明することがあまりありません。

語順が変わっても意味が壊れない

格変化があるおかげで、語順はかなり自由です。

これも、語順で意味が決まる英語の感覚だと落ち着かない部分ですが、助詞で役割が決まる日本語の感覚に近い。

「AはBだ」に動詞が要らない

アラビア語の名詞文には、be動詞に当たる語がありません。

هُوَ طَالِبٌ(彼は学生だ)— 「彼」と「学生」を並べるだけです。

日本語の「彼は学生」と同じ構造です。英語のis/am/areを補って考える癖がないぶん、日本語話者のほうが自然に入れます。名詞文の課を見てもらうと早いです。

備考

英語を勉強し始めの子ども時代、「be動詞」が何なのかわからなすぎて、やるせなかった気持ちを思い出しました。

be動詞、今考えても日本語ネイティブ少年にとってハードルめっちゃ高い概念だと思います。

日本語にない概念区分「~である」って訳されているけどなんかしっくりこないし、、大人や先生に聞いても「そういうものだからねえ」としか言われない。今僕自身大人になり、当時の先生方に深く同情してます。

どれくらいで、どこまで行くか

僕の感覚と、教材を作る過程で整理した目安です。1日30分の想定で書きます。

期間到達点
2週間ハラカつきの文字が読める
3か月初級文法が一周し、短い文章が辞書つきで読める
半年〜1年中級文法まで。ハラカなしの平易な文章が読み始められる
2年ニュース記事を、辞書を引きながら読み通せる
備考

この表はあくまで目安です。僕自身、思ったより進まない時期が何度もありました。遅れても気にしないでください。止まらなければ、いつかは着くと思います。

会話は別の軸なので、この表には入れていません。読解に絞った場合の目安です。

「2年」と書くと長く感じますが、3か月の地点でかなり景色が変わります。 文字が読めて、短い文章の構造が取れる。ここまで来れば、続くかどうかの不安はだいぶ薄れると思います。

難しさの本体は、たぶん別のところにある

2年やって思うのは、アラビア語の難しさは文法や文字そのものより、教材と学習環境の薄さにあったということです。

英語やフランス語なら、詰まったときに解説記事がいくらでも見つかります。アラビア語はそうではありません。日本語で読める体系的な教材が、そもそも少ないです。

だから止まると、そのまま止まります。

僕がこのサイトを作ったのは、この部分をどうにかしたかったからです。文法の難しさは変えられませんが、詰まったときに読めるものがある状態は作れるかなと思っています。

AI時代の今、ポイントごとでAIに何でも聞いて教えてくれる時代が来ました。その時代だからこそ、体系的な学習の道筋を示すこのサイトの価値が、アラビア語学習者の拠り所として、より際立つはずだと信じています。

今日やること

難しいかどうかを考えるより、第1課を10分読んでみるほうが早いです。

読んでみて「これは無理だ」と思ったら、そのときやめればいいと思います。始める前に難易度だけ調べて終わる、というのがいちばんもったいないパターンかなと。