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アラビア語を独学で始める手順 ─ 何から手をつけ、どの順で進めるか

· 約11分
Darasa.jp管理人
Darasa.jp管理人

2年前、私もここで詰まりました。

「アラビア語を勉強したい」と思って検索する。出てくるのは、参考書のリストです。

『ニューエクスプレス』シリーズなど、どれも定評のある本なのは分かる。でも、どれをどの順番で、どこまでやればいいのかが掴みづらかったです。

今までの言語学習経験的に、とりあえず1冊買って、文字or初級文法のページで止まる。しばらくして本棚に置いたままになる。 そのうちにその本の新鮮さがなくなって読み返しもしなくなる。

だいたいこのパターンでした。

この記事では、お金をかけずに、どの順番で、どれくらいの期間でアラビア語を「読める」ところまで行くかを書きます。僕自身が2年かけて遠回りした順路を、まっすぐに引き直したものです。

その前に:フスハーか、方言か

最初に1つだけ決めることがあります。

アラビア語には2つの顔があります。

  • フスハー(正則アラビア語) — 書き言葉。ニュース、書籍、公文書、クルアーン。アラブ世界のどこでも通じる
  • アンミーヤ(方言) — 話し言葉。エジプト方言、湾岸方言、レバント方言……国ごとに違い、離れた国どうしだと通じないこともある
    • 僕のレバノン人の友人は、僕が学んだフスハーを色々披露するとすぐに「うちではこう言うよ」と紹介してきてました。

日本語でいえば、フスハーが「書き言葉の日本語」、アンミーヤが各地の方言、というよりもう少し差が大きいイメージです。

何も知らない状態だと、フスハーもアンミーヤも、存在は理解しているけど宙ぶらりんな概念、という感じ。 これはアラビア語をある程度わかってからじゃないと明確になっていきません。わからないなりにとりあえずで学習を進めてもらった方が良いかなと思います。

独学ならフスハーから始めるのを勧めます。 理由は3つ。

  1. 教材が圧倒的に多い。方言の日本語教材はほとんどないのと同じ。
  2. 文法が体系化されていて、独学しやすい形になっている
  3. フスハーを知っていると、あとから方言を学ぶときに骨格が分かる

逆に「来月エジプトに旅行するので話したい」なら、フスハーは遠回りだと思います。その場合はエジプト方言の会話集から学習していただくのがいいかなと思います。

このサイトはフスハー専門です。以下はフスハーの話として読んでください。

全体の順路

先に全体のアラビア語学習ロードマップを紹介します。

ステップ内容目安
1文字と発音2週間
2初級文法2〜3か月
3語彙2と並行
4短い文章を読む3か月目から

3か月です。毎日30分で、ハラカ(母音記号)つきの短い文章が辞書を引きながら読めるところまで行きます。

備考

「毎日30分」って意外とルーティンに組み込むの大変で続かないと思います。なので気楽に進めてください。目安と比較してやる気を失わないでください。(過去の自分への激励です)

順番に意味があります。特に1を飛ばして2に行かないでください。文字が曖昧なまま文法に進むと、例文が読めないので全部が止まります。 文字だけは飛ばさずにしっかり丸暗記することをお勧めします。

ステップ1:文字(最初の2週間)

目標は「読める」だけでいい

28文字を覚えます。ここで大事なのは、書けるようになる必要はまだないということ。

手書きは楽しいですが、読解の役に立つのはずっと後です。最初の2週間は「見て音が出る」状態だけを作ります。

1文字ずつ覚えない

28文字をバラバラに暗記しようとすると、だいたい10文字目あたりで崩れます。

アラビア文字は、骨格が同じで点の数と位置だけが違う文字が多い。ب ت ث は形が完全に同じで、点が下に1つ・上に2つ・上に3つと違うだけです。

だから、1文字ずつではなく骨格のグループで覚えます。実質、覚える形は28個より少ない。

最初の関門:母音記号

ここで多くの人が固まります。

アラビア語の28文字はすべて子音です。母音は文字の上下につける小さな記号(ハラカ)で表します。そして——

実際の新聞や本では、その記号は書かれません。

子音だけを見て、文脈から母音を補って読む。初めて聞くと無茶に思えますが、日本語で漢字の読みを文脈で決めているのと同じことです。慣れるみたいです。慣れると信じて続けるしかないです。

学習用の教材にはハラカが振ってあるので、最初はそれを読みます。

具体的な進め方

1日1課で9日、余裕を見て2週間。

最後の8. 格語尾の読み方だけは、文字ではなく文法の話です。でもここを先に見ておくと、次のステップが驚くほど楽になります。飛ばさないでください。

ステップ2:初級文法(2〜3か月)

週2課のペース

初級文法は15課。週2課で8週間、つまずいた分を足して2〜3か月です。

順番はこうなります。

  1. 格変化 — 単語の語尾が文法的な役割を示す仕組み
  2. 名詞の性と数、定冠詞
  3. 名詞文 — 「AはBだ」の文
  4. 代名詞、形容詞、イダーファ、前置詞
  5. 動詞文、否定、命令形

日本語話者は、ここで有利になります

アラビア語の格変化は、英語話者にとってはかなり厄介な仕組みです。英語には対応するものがないので。

でも日本語には助詞があります。

  • اَلْوَلَدُ -u = 少年
  • اَلْوَلَدَ -a = 少年
  • اَلْوَلَدِ -i = 少年

語順ではなく語尾が役割を決める。「語尾が助詞の代わりをしている」と思えば、それだけの話です。英語経由の教材だとここが長々と説明されますが、日本語話者にはほとんど説明が要りません。

詳しくは格変化の課で解説されています。

よくある失敗:動詞の活用表から入る

アラビア語の動詞は、人称・性・数で形が変わります。活用表を見ると、1つの動詞に十数個の形が並んでいる。

これを最初に暗記しようとすると、まず折れます。

動詞は13課まで出てきません。それまでは名詞と形容詞だけで文が作れます。順番どおりに進めば、動詞に着く頃には格変化が体に入っていて、活用表の意味が分かる状態になっています。

ステップ3:語彙は、文法と並行して

文法が終わってから単語、ではありません。同時にやります。

語根で覚える

アラビア語の単語は、**3つの子音の「語根」**から作られています。

ك ت ب(書くこと)から——

  • كِتَاب kitāb = 本
  • كَاتِب kātib = 書く人
  • مَكْتَبَة maktaba = 図書館
  • مَكْتَب maktab = 机・オフィス

1語ずつ覚えるのではなく、語根で束にする。これがアラビア語の語彙が一気に増える瞬間です。単語の成り立ちにまとめてあります。

1日10語を毎日

週末に100語まとめてやるより、1日10語を毎日のほうが残ります。忘れかけたタイミングで出し直す「間隔反復」が効くからです。

単語復習は、その日にやるぶんだけを出すようにしてあります。3分で終わります。

3分測れるタイマーも同ページに用意してあります。「3分だけやろう!」と決めて取り掛かれるのでかなり楽になるかなと。

ステップ4:読む(3か月目から)

文法が一周したら、短いものを読み切ります。

読み切る、が大事です。分からない語を辞書で引きながらでいいので、最後まで行く。1本読み終えた経験があるかどうかで、その後の進みが変わります。

初級の短編は、初級文法15課の範囲だけで読めるように書いてあります。

読めないときの切り分け

止まったら、原因を3つに切り分けてください。

  1. 単語を知らない → 辞書を引けば解決。問題なし
  2. 文の構造が取れない → 該当する文法の課に戻る
  3. 語尾の母音が読めない → 格語尾の課に戻る

3が一番多いです。そして一番、放置されがちです。

音声はどうするか

正直に書きます。このサイトには音声がありません。

発音の解説は書いていますが、音は載せていない。読解に特化しているためです。

音は YouTube のアラビア語チャンネルや、italki などのオンラインレッスンで補ってください。ネイティブの音を聴くのは、最終的には避けて通れません。

ただし、最初から全部やろうとしなくていいとも思っています。

「読む」と「聞く・話す」は別の筋肉です。同時に鍛えようとすると、どちらも中途半端になる。まず3か月、読むほうに振り切る。読めるようになってから音に行くと、聞こえてくる単語が全部「知っている単語」なので、進みが速くなります。

お金をかけるとしたら、どこか

ここまで全部無料です。実際、最初の3か月は無料で足ります。

そのうえで、お金をかける価値があるのは次の2つです。

  • 紙の文法書を1冊 — 手元で引ける辞書的な存在。ただし独学が軌道に乗ってから。最初に5冊買うのは、いちばんよくある失敗です
  • オンラインレッスン — 発音の矯正と、書いた文の添削。週1回でも効きます。ただしこれも、文字が読めるようになってから

順番が逆になると、お金を払ったのに成長が足りてない、という状態になります。私はやりました。

3か月後に、どうなっているか

具体的に書いておきます。

  • ハラカつきの文章を、詰まらずに音読できる
  • 「これは大きな家だ」「少年は学校へ行った」レベルの文を、文法的に説明できる
  • 辞書を引きながら、初級の短編を最後まで読める
  • ニュースの見出しは、まだ読めない(ハラカがないので)

最後の1つは正直なところです。ハラカなしの実文を読むには、もう少し語彙と慣れが要ります。でも3か月でここまで来れば、あとは積み上げるだけの話になります。

今日やること

1つだけです。

文字と発音の第1課を読んでみてください。10分で終わります。

本を買うのは、そのあとでも間に合います。