メインコンテンツまでスキップ

7. 太陽文字・月文字とつなぎのハムザ

このページは「書いてある通りに読まない」ケースを扱います。アラビア語で表記と発音がずれる場面はほぼここに集中しているので、先に知っておくと音声を聞いたときの混乱が減ります。

定冠詞 الـ

アラビア語の定冠詞は الـal-)で、英語の the に相当します。名詞の頭に、スペースを空けずにくっつけて書きます。

不定
كِتَاب (kitāb / ある本)الْكِتَاب (al-kitāb / その本)
بَيْت (bayt / ある家)الْبَيْت (al-bayt / その家)

文法的な働きは 初級文法 2. 定冠詞 で扱います。ここでは読み方に絞ります。

太陽文字と月文字

الـل は、後ろに来る文字によって発音されたりされなかったりします。28文字はこの振る舞いで2つのグループに分かれます。

名前の由来

グループ名は、それぞれの代表例から来ています。

表記発音
太陽文字太陽 = شَمْسالشَّمْسash-shams(l が消える)
文字月 = قَمَرالْقَمَرal-qamar(l を読む)

「太陽」の شl を飲み込む、「月」の ق は飲み込まない。それぞれのグループの代表として名前になりました。

太陽文字(14文字)— ل が消える

ت ث د ذ ر ز س ش ص ض ط ظ ل ن

これらの文字の前では、ل の音が消え、代わりに後ろの文字が重なります(シャッダが付きます)。

表記誤った読み正しい読み意味
الشَّمْسal-shamsash-shams太陽
الرَّجُلal-rajular-rajul男性
الطَّالِبal-ṭālibaṭ-ṭālib学生
النُّورal-nūran-nūr

書くときは ل をそのまま書きます。 消えるのは音だけです。ハラカ付きのテキストでは、ل にハラカが付かず、次の文字にシャッダが付くことで同化が示されます。

月文字(14文字)— ل を読む

ء ب ج ح خ ع غ ف ق ك م ه و ي

表記読み意味
الْقَمَرal-qamar
الْبَيْتal-bayt
الْكِتَابal-kitāb
الْمَدْرَسَةal-madrasa学校

28文字を丸暗記しなくてよい

14文字ずつ2グループを暗記しようとすると大変ですが、実は覚える必要がありません。この分類には明確な理屈があります。

判定のコツ:舌先を使う音かどうか

太陽文字は、すべて「舌先を上の歯や歯茎に当てて(近づけて)出す音」です。

ل 自身も舌先を歯茎に当てて出す音です。つまり、ل と同じ場所で作る音が続くと、舌が動かずにそのまま次の音へ溶け込んでしまう——これが同化の正体です。

逆に月文字は、唇(ب م و ف)、喉(ء ه ع ح غ خ ق)、口の奥(ك)など、舌先とは別の場所で作る音です。ل から舌を動かす必要があるので、l の音がはっきり残ります。

判定に迷ったら「この音は舌先で作るか?」と自問してください。(جي だけは舌の中ほどを使う音で、月文字に入ります。)

参考までに、月文字を覚えるための伝統的な語呂として اِبْغِ حَجَّكَ وَخَفْ عَقِيمَهُ というフレーズが知られています。この文に含まれる子音がちょうど月文字14個です。

つなぎのハムザ(ハムザ・ワスル)

もう1つ、表記と発音がずれる重要な現象です。

الـا には、ハムザが付いていません(أل ではなく ال)。これはつなぎのハムザهَمْزَة الْوَصْل hamzat al-waṣl)と呼ばれ、次の性質を持ちます。

前に語が続くと、母音ごと消える。

状況読み
文頭・単独で読むときاَلْبَيْتُal-baytu
前に語が続くときفِي الْبَيْتِl-bayti(fī al- ではない)

fī al-bayti と読むのは誤りで、正しくは fī l-bayti です。同様に:

表記読み
عَلَى الطَّاوِلَةِʿalā ṭ-ṭāwilati
مِنَ الْمَدْرَسَةِmina l-madrasati

この省略を示すため、alif の上に ٱ という記号(ワスラ)を書くことがあります。

الـ 以外にもある

つなぎのハムザは定冠詞専用ではありません。次の語も語頭がつなぎのハムザです。

単語単独での読み前に語が続くとき
اِسْم(名前)ismمَا اسْمُكَ؟ → mā smuka?(mā ismuka ではない)
اِبْن(息子)ibnعَلِيُّ بْنُ أَحْمَدَ → ʿaliyyu bnu aḥmada
اِثْنَان(2つ)ithnān

このほか、動詞の命令形(اُكْتُبْ uktub / 書け)や、Form VII〜X の動詞にも現れます。

消えないハムザとの見分け

ハムザの記号(أ إ)が書いてあれば消えません。 これは「切り離すハムザ」(هَمْزَة الْقَطْع) と呼ばれます。

種類表記前に語が続くとき
つなぎのハムザا(記号なし)اِسْم消える
切り離すハムザأ إ(記号あり)أَب消えない

まとめ

表記と発音がずれるのは、次の3つの場面です。

  1. 太陽文字の前の ل — 書くが読まない(次の文字を重ねる)
  2. つなぎのハムザ — 前に語が続くと母音ごと消える
  3. 語末の格語尾 — 区切るときは読まない(次のページ

いずれも「読み飛ばす」方向のずれです。書いてある文字を全部律儀に読むと、かえって不自然になると覚えておいてください。


練習

問題 1: الشَّمْس の正しい読み方はどれですか?

問題 2: الْقَمَر の正しい読み方はどれですか?

問題 3: 太陽文字に共通する性質はどれですか?

問題 4: النُّور の正しい読み方はどれですか?

問題 5: فِي الْبَيْتِ の正しい読み方はどれですか?

問題 6: つなぎのハムザと切り離すハムザの見分け方はどれですか?

問題 7: مَا اسْمُكَ؟(あなたの名前は何ですか)の正しい読み方はどれですか?

問題 8: عَلَى الطَّاوِلَةِ の正しい読み方はどれですか?

問題 9: 太陽文字の前では、定冠詞の ل を書きますか?

問題 10: الرَّجُل(その男性)のローマ字転写を書きなさい。


次のページ: 8. 格語尾の読み方